コラム

原発震災を引き起こした「科学者の科学離れ」

林 衛 2011-12-25

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による地震動とその後に到達した津波によって,東京電力福島第1原発では「全電源喪失」という事態が生じ,原子炉や使用済み燃料プールの冷却機能が失われ,つぎつぎと水素爆発が繰り返され,チェルノブイリ原発事故に匹敵する深刻な事態を招いてしまった。

チェルノブイリ事故がおこったのは1986年4月26日だから,もう25年も経っている。チェルノブイリ原子力発電所は,1971年に着工,1978年に1号炉が営業運転開始,事故を起こしたのは1983年に着工された4号機だった。福島第1原子力発電所は,1号機の着工が1967年で営業運転開始が1971年と,チェルノブイリよりも古い。

大相撲八百長問題の「共犯者」

林 衛 2011-03-31

みそぎが済んだと思われていた野球賭博事件が,警察に証拠品として押収されていた携帯電話のメール記録によって,八百長問題に飛び火した。復元のなかに,じつに生々しい件の通信記録がみつかったという。警察取材に基づく2011年2月2日の毎日新聞朝刊スクープは,土俵の外を騒がせていた一連の不祥事を,ついに土俵上の問題に引きずり出すこととなった。

新聞,放送,ネットといったメディア上でも批判がうずまき,2月6日の日本相撲協会理事会は,1946年夏場所以来65年ぶりとなる本場所(3月大阪場所)中止を決定。「残念だ」が「やむをえない」といった声がメディア上でこだました。

「科学者の科学離れ」でよいのか

林 衛 2011-02-11

雑誌『科学』(岩波書店)編集者時代の体験から始めたい。

大学院で地球科学を修了後,たまたま入社できた出版社で科学雑誌編集部に席を得た。一口に科学といっても,その広がりの大きさにくらくらしたのがスタートだった。少人数の編集部で,幅広い分野をカバーする総合科学雑誌を編集する。それまでも,好きな記事,必要なページに目を通す読者ではあったが,編集部の仕事として毎号すべてのゲラの通読,校正をするのはもちろん,多様な分野の企画を立案・実現するために,各分野の著者・研究者とのやりとりする生活が始まったからだ。