私たちは何者か

私たちの中核は、名古屋大学の科学哲学が専門の戸田山和久さんの研究室の周辺にたむろしている科学者と哲学者です。具体的に誰がいるのか知りたい方は、上のメニューバーの Activities/Members からご覧ください。私たちの活動に興味がある、議論してみたい、質問してみたいという方は、office[[at]]sxpxs.org ([[at]]はアットマーク@のこと) にメールをください。

私たちの考え方 Science of Philosophy of Science

宇宙が人間を生み出したのですが、その人間が宇宙を語っています。つまり、宇宙の中に宇宙の像が描かれているという不思議な入れ子構造をしています。これはいったいどういうことでしょうか?私たちは、科学の哲学を科学にしてしまおうと考えています。科学の対象は自然ですが、その自然の中には人間の営みも含まれ、人間の営みである科学も哲学も含まれていると考えています。このような科学の営みを科学することによって、宇宙の中に宇宙の像が描かれるという不思議を解明したいというのが遠大な目標です。

科学の歴史は、宇宙と地球の歴史の中に埋め込まれています。宇宙が 137 億年前にできて、地球が 45 億年前にできて、地球の上に生物が生まれ、どういうわけか神経系がやたらと発達した生物であるヒトが生まれ、そのヒトの集団が科学を始めて宇宙を語りだすようになりました。そういうことを考えていくと、どうして神経系が発達してくると科学や哲学をやりだすようになるのかとか、なぜヒトの群れが集団として科学をするようになるのかとかいったような研究課題が浮上してきます。

宇宙はともかくとして、科学だけを観察してみても、実験して観察して理論化するというだけの単純な営みではないということがわかります。たとえば、最近の計算機の発達により、自然を見ないで計算ばかりしている科学者が出てきました。これは自然科学者なのでしょうか?あるいは、野山を歩いて自然の観察をしている人にとって理論とはなんなのでしょうか?解明しないといけないことはたくさんあります。

あるいはまた、東日本大震災は、自然科学と社会の関係について深く考えなければならないと感じさせました。科学や哲学や倫理は社会設計の基本になるでしょう。

こういった雑多なことをかんがえてゆこうとしています。

具体的な研究内容

具体的には以下のような研究をしています。より詳しくは、活動記録をご覧ください。

Philosophy and Science of Science

これまで科学哲学では、科学の方法論の妥当性を検討したり、用いられている概念や行われている論争を分析して、それらがいかにあるべきか、どう改善されるべきか、といった考察を行ってきました。このプロジェクトでは、こうした従来の科学哲学のテーマや分析をある程度継承しつつも、哲学の観点からだけでなく、科学の観点からそのテーマを再考察するということを目的にしています。たとえば、具体的には以下のようなプロジェクトを動かしつつあります。

  1. 科学の発展・進化を考察する際、歴史的な考察だけでなく、シミュレーションや認知科学の観点から考察する、
  2. 「実験とは何か」というテーマに関して、実際の実験現場を詳細に観察して実験家と共に考察を行う、
  3. 系統学を中心にさまざまな分野を総合・連携する文化系統学の可能性を模索する、
  4. (これは地球惑星科学の歴史と哲学にも関連しますが)たとえば地球惑星科学や生物学の歴史的事例に則しながら、学問分野間の連携・総合とはどのようなもので、そしていかなる姿が望ましいのかをエージェント・ベースド・モデルによるシミュレーションなども使いながら考察する、

などです。

Philosophy and Science of Normativity

価値や規範は哲学の課題の中でもかなり伝統的なものの一つですが、SPSでは従来の哲学的観点だけにとらわれず、さまざまな手法・観点からの考察を目指しています。たとえば規範や価値の進化的・認知科学・神経科学的考察、さらにはそれらを踏まえたモデルを構築し、シミュレーションなどを用いて社会や組織のあるべき姿を予測・考察することが現時点でのテーマです。

History and Philosophy of Geoscience

科学史科学哲学ではこれまでさまざまな分野(たとえば物理学、生物学、社会科学など)に関して考察を行ってきましたが、地球惑星科学はあまりその対象になってきませんでした。しかし、地球惑星科学は科学史科学哲学の考察の対象として、非常に興味深い特徴を備えています。たとえば、

  1. 物理学を基礎にしているが、地球の「歴史」も扱っている、
  2. プレートテクトニクス理論の登場など、かなり大きな概念・理論変化が比較的最近生じており、科学の変化を考察する際のよい題材になりうる、
  3. 一部の地球惑星科学者(たとえば都城秋穂など)によって、地球惑星科学者自身の科学哲学的考察が残されている、
  4. 地球や宇宙の構造、形成に関しては、デカルトなどを含め、古くから様々な科学者・自然哲学者が考察を残している、

などです。SPS所属メンバーも、上記のようなテーマについて地球惑星科学連合大会などでさまざまな発表を行ってきています。