AOKI, Shigeyuki
青木 滋之
個人情報
1974年 神奈川生まれ 京都大 人間・環境学 人間・環境学博士経歴と関心の対象
もともとは17世紀イングランドの哲学者ジョン・ロックの研究を行っていたところ、ロックが当時の著名な科学者―ボイル、フック、ニュートンら―と密接な関係があり、そうした科学者を哲学的に擁護する活動を行っていたことに非常に大きな驚きと興奮を覚えたのが、科学史・科学哲学との接点のはじまり。そうした科学者の著作を読み始めたのが研究者への第一歩になった。イギリスに留学して本場での研究に触れて、この領域の第一人者になってやろうと思ったが、他方、こうした古典研究に飽き足らず、「ロックが現代に生きていたらどのような哲学を展開していたのだろう」と気になりだして、自然主義哲学の旗手である名大情報科学研究科の戸田山和久教授の下で、現代の自然主義哲学にも本格的に手をつけ始めた。専門は、上の経緯にも触れたように、17世紀イングランドを中心とした認識論と、現代の自然主義認識論。両者は一見無関係に見えるかもしれないが、深いところでつながっている。それはつまり、「科学の方法や成果を認識論に当てはめると、認識論はどのように変わっていくのか?」という営みを、共に突き詰めようとしている点。例えば、あまり知られていないが、17世紀のジョン・ロックによる経験主義の始まりは、当時の実験医学にルーツを持っていることが手稿研究などにより近年ますます明らかになりつつある。ロックは哲学者である以前に、イングランド実験医学の祖といわれるシドナムの助手であり医者だった。その実験医学の手法を哲学の方法論として用いたら、経験論哲学なる体系ができあがった、というのが、私がこれまでの研究論文で明らかにしてきたことだ。
では、現代科学を認識論に適用したら、どのように認識論は変わっていくのだろう?その答えは、どの自然科学を範として自然主義認識論を構築していくかによる。動物版心理学とも言える認知行動学や、神経科学に依拠した自然主義認識論はすでに模索され始めている。私の目下の関心はこれらの成果を磨き上げ統合しながら、「知識の総合科学」と呼べる段階へと認識論を押し上げることだ。そのためには、人間という認知システムが、どのように進化形成されてきたのかを詳らかにすることが必要不可欠になってくる。
こうした中で、熊澤さんらを中心とする「地球と生命の共進化」プロジェクトに幸運にも出くわした。このプロジェクトを自然主義哲学者の立場から応援し、その結果見えてくる高みからは哲学はどう変貌していくのか、本当に哲学は自然化できるのか、を見届けたい。こうした人類史上初(!)のプロジェクトに参画できることに、とても興奮しワクワクしています。