研究歴(2003.4〜)

    2003年4月〜2010年2月(博士課程2年〜現在)
    ・研究課題の模索と研究課題「中間子多重発生機構の解明」の発見
     DONUT実験での成果をまとめて、数本の論文が掲載されはじめたころに肉体的・精神的疲労、および交通事故による精神的苦痛により研究活動継続に困難を感じ研究室を離れた。しばらくの療養後、高等学校で物理学と数学を教える傍ら、新たな研究課題を模索した。
     原点に立ち戻り、F研の歴史を俯瞰することから始めた。F研設立は丹生潔(現:名古屋大学名誉教授)による。そこで、丹生の業績を調べるうちに、1971年のチャーム粒子発見に行き着いた。チャーム粒子の特性研究はF研の業績のひとつである。F研のメンバーとの対話の中で、ニュートリノ反応によるチャーム粒子の種類別生成断面積の測定やチャーム粒子の2次衝突の検出、FNAL-E653 1stRUNの再解析によるビューティ粒子の直接検出といった課題が挙がったが、いずれも、予想あるいは確認されている現象の追認であると判断した。
     丹生の研究をさらにさかのぼると、原子核乾板による高エネルギー宇宙線現象の解析に突き当たった。1950年代のことが記されている資料には日本における宇宙線研究の経過とその業績が記録されており、坂田昌一の「自然の階層性」や武谷三男の「三段階論」を指導原理とする研究がなされていたこと、また、当時の宇宙線研究は、戦後日本の物理学を世界レベルへ向けて再建する鍵であり、高エネルギー・ジェット現象の解析をとおしての新たな自然観の模索であったことを知った。
     その後、丹生との面談や手渡された各種資料により、丹生の業績のひとつである中間子多重発生機構の解明に関心をもつようになった。